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クリニカルシーケンス インタビュー①

「先週血液検査をしました、今日その結果をご説明します」
というくらいのタイムスパンで

独立行政法人国立病院機構東京医療センター・臨床研究センター
診療部眼科医師・視覚研究部研究員
藤波 芳 先生


臨床現場での活用を目的としたクリニカルシーケンスを実施される病院や研究施設が増えています。
本インタビューでは、レポートシステムを導入された先生に、ご研究内容とクリニカルシーケンスの取り組みについてお話を伺います。

◆先生のご研究について、簡単にご紹介いただけますか

岩田 岳 部長(右)と藤波 芳 先生(左)

 僕の研究は、眼の中でも特に遺伝性疾患が多い網膜という臓器に関するものです。網膜の遺伝病と診断される患者様の数は国内で5万人にのぼり、失明の三大原因の一つに入るほど頻度の高い疾患です。近年、遺伝性網膜疾患以外の病気の治療が急速に改善した事で、遺伝性疾患に対する治療の確立が喫緊の課題となってきました。
 僕の夢は現在有効な治療が殆どない「遺伝性網膜疾患」に対して、治療法を確立する事であり、そこに至る全行程が、研究対象であると考えています。
 具体的には、臨床診断、遺伝子診断、表現型・遺伝子型関連解析、治療導入についての研究を、岩田岳部長、角田和繁部長を中心に構成される国内の23施設(Japan Eye Genetics Consortium)、欧州7施設、米国12施設、豪州1施設、Asian Genetic Consortium 70施設との連携の下、同一の目標を持って推進しています。

◆この研究テーマを選ばれたきっかけを教えてください

 名古屋大学在学中に、網膜疾患の世界的権威である三宅養三教授(現・愛知医科大学理事長)に、網膜遺伝性疾患の電気生理学的アプローチを用いた臨床診断の面白さを御教授いただく機会があり、人生を変える程の衝撃を受けました。また、分子遺伝生物学的研究が急速に進歩した時代背景も手伝って、臨床、研究、両面から遺伝性網膜疾患に興味を持つ形になりました。
 加えて、眼科領域の臨床医・科学者が遺伝性疾患に本格的に取り組み始めた2006年頃に、僕自身が眼科医としてキャリアをスタートさせた事もあり、比較的自然な形で遺伝性眼疾患を専攻しました。

◆次世代シーケンサ(NGS)との出会いはどのようなタイミングでしたか

 2008年頃から次世代シーケンスという手法に興味は持ってはいたのですが、信頼性や価格の面で、現実的に研究に導入することは難しい状況でした。
 個人として直接かかわる機会があったのは、英国UCL Institute of Ophthalmology, Geneticsに留学していた頃で、眼科領域においても本格的にNGSが導入され始めた時期でした。それまでは、第一世代シーケンサでターゲットとなる遺伝子のみをダイレクトシーケンスするという方法をとっていました。新規遺伝子の同定は特に大変で、SNPアレイなどの手法を用いて、原因遺伝子を絞れるところまでなんとか絞ってから、ダイレクトシーケンスを行っていましたが、労力としては相当なものでした。
 それが、NGSの発展と価格低下により、家系内の全症例に対して躊躇なくエクソームシーケンスを行う時代に数年で一気に変容しました。新規遺伝子が次々と同定される裏での、無数の候補変異との格闘についても直に経験しました。
 同じ時期に、自身のホームである東京医療センター・臨床研究センターでも2011年からエクソームシーケンスを導入する事となり、現在までのライフワークとなっています。

◆NGSを導入したのは研究目的だったのでしょうか?

 臨床診断、遺伝子診断、表現型・遺伝子型関連解析、治療導入へのフローはNGS導入以前から確立されておりましたので、初期段階よりNGS解析は臨床診断への活用を目的として行われて来ました。
 臨床的に意味のある変異情報を解析結果としてレポートする構想や、最終的にそれらのレポートシステムを保険適用とする未来像などは初期段階から存在していました。
 現在コンソーシアム内でおよそ1200~1500検体、家系でいうと1000家系以上のデータが集積されており、これが5000検体に達した所で、研究結果を集計・論文化し、保健医療に落とし込むという目標を持って取り組んでいます。

◆NGSを使った研究の中で難しかったことについて教えてください

 研究を進めるにあたり、オリジナルでレポート作成を行っていましたが、手入力での作業部分が非常に多く、作業工程の煩雑さに難渋していました。また、エクソームシーケンスの解析の知識と経験が不十分であり、アノテーション付与で重要となる情報ソースへのアクセスについても、不慣れであり不安がありました。

◆そのためにレポートシステムを導入されたのですね

 ちょうどアメリエフの勉強会に参加した際に、これまでの手順を一括で行える「レポートシステム」の構想を聞きまして、同じアイディアを共有できる事に興奮し、導入を検討しました。まさに、レポートを作成作業までを一括して行えるシステム構築が必要となったタイミングでの出会いでした。

◆レポートシステムをどのようにご利用いただいていますか

レポートシステムを操作される
藤波 芳 先生

 現在は、レポートを患者様に直接見せる事はないのですが、医師が診察前にレポート内容を確認し、患者様に解りやすいように噛み砕いて解析状況について説明するという形で利用しています。協力施設の臨床医師に、2014~2016年の2年間で、数回に分けて800検体のレポートをお返しています。 また、レポートシステムで作成した情報をコンソーシアムのデータバンクに蓄積し、コンソーシアム内での協力施設、さらには国際コンソーシアムの協力施設とで、結果を共有できるように努めています。
 加えて、これらのデータを下に、学会発表(The Association for Research in Vision and Ophthalmology annual meeting 2016 など)や論文報告も活発に行っています。

◆レポートシステムをお使い頂いてのご感想をお聞かせください

 一つのコマンド入力のみで複数の解析ソフトウェアを実行できるパイプライン操作が完了する点が、非常に便利だと感じています。また、解析結果の解釈に不慣れな臨床医師にとって、臨床上必要とされる最低限のデータがレポートされるため、情報が簡便で理解しやすいと思います。

◆今後のクリニカルシーケンスの発展についてどのような期待をお持ちですか

 患者様へのカウンセリングを実施する為に、遺伝子診断の根拠となった必要最低限の情報を、さらには予後や治療に関する情報も合わせて、迅速かつ円滑に報告する形を最終的な理想形としております。
 ある疾患に罹患した患者様に対して、「遺伝子解析結果ではこうです」、また、「国内・国外の施設での情報を照らし合わせて、自然経過・予後・治療についてはこのような状況です」といったことを臨床の現場でわかりやすく伝えることがひとつの目標だと思います。それに付随して、当然アカデミックな意味での整合性を満たしており、学会発表や論文報告に使えることも重要となります。
 僕の最終イメージは、ドクターが、アメリエフが開発した小さな端末で、「レポートシステム」を表示し、それを元に患者さんへ説明できるような形態です。情報ソースや詳細なデータについても別途表示されたシートがあり、ドクターが其方もあわせて確認できる事も、当然必須となります。
 また、レポート作成までの迅速化も最重要課題の一つです。「先週血液検査をしました、今日その結果をご説明します」というくらいのタイムスパンが理想だと思っています。そのために、まずはレポートシステム全体のWeb化、インハウスデータのブラウザ化を、今後アメリエフに期待しています。

インタビュー:2016年2月